可逆的選択

趣味で書いています @yadokarikalikar

赤い目の神様

辛いことが起こると、いつも私は神様にお願いをする。
神様どうか。助けてどうか。
心の中で一心に唱えると、いつの間にか私の背後には人影があって、振り向くと神様はいる。怒っているのか笑っているのかよく分からない表情でいて、その大きな背丈は私を見下ろしている。
私は神様に、助けてもらえないかとお願いをする。
神様どうか。助けてどうか。
神様はなにかを呟いて、それだけ。
赤い目だけが私の網膜に焼き付いたまま、消えてしまう。

ある日私は取り返しのつかないことをしてしまった。家で飼っている猫を殺してしまった。たしかに私はこの猫のことが好きじゃなかった。だけど私以外の家族は溺愛と言ってもいいほどに愛している。いよいよ私は困ってしまう。
神様どうか。助けてどうか。
神様は後ろに現れる。この猫を生き返らせて!
神様はなにかを呟いて消える。
さっきまで私の手の中で血に濡れて冷たくなっていた生きものは、腕をすり抜けて歩き回っている。助かった。
視界の端っこが赤い光でちかちかしている。

辛いことが起こると、いつも私は神様にお願いをする。
神様どうか。助けてどうか。
神様が助けてくれる度、私の視界は紅く染まってゆくけれど。