可逆的選択

趣味で書いています @yadokarikalikar

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

二分三十秒のご馳走

「三枚交換します」 「うええ……じゃあ一枚交換で」 「コールします。君は?」 「……コールで」 「ストレートフラッシュです」 「先輩強すぎませんか」 「君の手配は?」 「……フラッシュです」 「私の勝ちですね」 「ぐぬぬ」「こんな時間ですか」 壁に掛けら…

春の巻きもの

「春巻きって、春を巻いてるんでしょうか?」 先輩が急にそんなことを言うものだから、俺は思わず彼女の方を見た。 「……違うと思いますが」 俺は直感でそう答える。 「では、なぜそのような名前なのでしょうか」 先輩はどうにも腑に落ちないといった表情を浮…

四月(4/4)

自分の部屋の天井をぼんやりと眺めながら、俺はたゆたう意識とともに寝転がっている間仕切りを開けて入ってくる佐月は、手に持つ盆に何かを乗せてコップ一杯の水と、湯気のたつ炒飯お前という奴は。勝手に台所を使うなそんな言い方するんだったら、もう作ら…

四月(3/4)

身体が重力を遠ざけたより精確に描写するなら垂直抗力が霧散した左足は虚空を踏み締め、傾く体幹は棒倒しを彷彿とさせる 「先輩!!」右腕を掴む心許ない感触と眼鏡の奥に煌々と輝く瞳、圧倒的な生の脈動強引に引き寄せられて空いた手を地につく 肩で息をす…

四月(2/4)

青ざめた気色で水瀬は要塞を後にする よもや自分は霊現象とやらに遭遇したのではないか?とでも言いたげな様子で霊などこの世界に一欠片も存在し得ない棟内にすら廃材が溢れる要塞でも例外はなくそうだ あれはたしかに佐月だが 本当の意味の佐月ではない 動…

四月(1/4)

正門から入るよりも南門からの方が約六分、時間を短縮して室に着く土だけで充たされ種を植えられずに置かれた鉢植えが周囲を囲むのを横目に第四号棟、誰かが面白半分に「要塞」なぞと揶揄した鉄筋へと足を踏み込む律儀に詰め込まれた機材や紙束の山をすり抜…