可逆的選択

趣味で書いています @yadokarikalikar

彼女と彼と怪談

「こわいはなししていい?」
「え、突然?」
「これは友達からきいたんだけどね」
「無視?」
「大学生のカップルが二人だけで夜中にお墓に行ったの。肝試ししてたのね」
「うん」
「そしたらどこかから小さい女の子の泣く声が聞こえたの」
「はい」
「それでね、彼女の方は怖くなって帰ろうって言ったんだけど、彼氏の方がね」
「彼氏の方が」
「既に死んじゃってたの」
「ちょっとまって」
「ひゃっ、こわあい」
「怖いけども」
「なに」
「それなんか違うくね?」
「こわくない?」
「てか彼氏いつ死んだの」
「あ、そのことなんだけど、この話には続きがあってね」
「そうなのか」
「実は彼氏はね……死んでなかったの」
「どゆこと」
「ひゃあっ、こわあい」
「びっくりするぐらいなんにもわかんないんだけど」
「すっごいこわいよね」
「結局彼氏は死んでなかったのか」
「うん」
「色々と意味わかんなくない?」
「はい、つぎは君の番だよ」
「無視?」

「はやくはなして」
「そんな急に言われても、無いな」
「棄却」
「なにをだよ」
「つべこべ言わないの」
「えー、じゃあ軽いやつだけどいいか」
「かもんかもん」
「風呂入ってるときとかって、たまに居やしない誰かの視線を感じたりするだろ」
「うん、あるある」
「もともと水回りってのは霊とかを呼びやすいらしいんだけどな。あの視線って気のせいじゃないらしいんだよ」
「そうなの?」
「うん。その手のサイトとか掲示板を見てれば結構聞く話なんだけどさ」
「ふんふん」
「なんか視線感じるなって思って振り返るんだけど、タイミングが悪かったらそこに顔があって、目が合うらしい」
「え」
「いや、まあそれだけなんだけど」
「こわいよ」
「そうか」
「ば、ばか、ほんとにこわい」
「そうかな」
「今日の夜一人でお風呂入れない」
「大丈夫だって」
「むり。絶対なにかいる」
「そんなことないから」
「却下」
「だからなにをだよ」
「怖がらせたばつとして喉仏往復びんたの刑ね」
「拷問じゃねえか」
「ていうかなんでそんなこわいはなしするの」プンスカ
「お前から振った話だったんだけどな」